英語の学習法(中学生)※とても長いので保護者様だけがお読みください
日頃山口のブログを読んでいただいている皆様方は、もしかしたら私が中学校や高校の英語の授業に対して懐疑的なのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、そんなことはまったくありません。
中学校や高校で使われている教科書の例文は本当にオーソドックスで、みなさんが学びやすいようにできています。
ただまずいのは、勉強に対して熱心なお子様から、そうでない子まで含めて、40人近い中高生を一斉に一人の先生が教えるということに無理があるのです。
例えば、中学校1年生で学ぶ”I’m interestede in baseball.”という文章にしても、本当のところは以下のように指導する必要があります。
・この文章は厳密には受動態
・元の文章は”Baseball interests me.”で、『野球というものが私に興味を持たせている。』
・つまり、”interest”という動詞は、『興味を持つ』ではなく、『(物が人に)興味を持たせる』他動詞というもの
英語と日本語ではそもそも性質・構造・文化的背景と何もかも違うので、きちんとその違いから教えていくことが必要なのですが、いかんせんこの”interest”という動詞の説明一つとっても、学習に意欲のない子はまず理解ができません。
だから全員が理解できるように、”I’m interested in baseball.”はそういうものだから丸暗記してしまいなさいと指導をするのです。
ただ、別にこの指導法そのものは間違っていないと思います。
英語ももちろん言語なわけですから、短いフレーズや単語をたくさん覚えて意思疎通をはかれるようにすることは正しい学習法だと思います。
問題なのは、それなのに受験で求められる英語というものが、あまりにも違い過ぎるということです。
ただ、これも何も批判的なことを言いたいわけではありません。
そもそも山口は『受験英語』というものを実用英語だとは思っていませんし、中高生のみなさんがどれくらい頑張って勉強してきたのかを測る指標のようなものだと思っています。
言ってしまえば、『受験英語』は数学や社会と何ら変わらないものだと考えています。
それはさておきですが、学習に対してそこまで意欲のない子もターゲットにした集団授業をやっているわけですから、誤解を恐れずに言えば、いわゆる『受験英語』の基準を満たす授業をやるのは、現場レベルでは本当に難しいのです。
それなのに例えば去年の愛知県公立高校入試の整序問題で、こんな問題が出ていました。
(3)下線②のついた文が、本文の内容に合うように、【 】内の語句を正しい順序に並べかえなさい。
The dogs 【by / tell / is heard /using / the users / their / what sound 】bodies.
※ちなみに日本語の文章はありません
『”I’m interested in baseball.”はそういうものだから丸暗記するように!』という授業を受けてきた子供たちが、果たしてこれを日本語の文章もなしに解けるのか、本当に疑問に思います。
一つの文章に、これだけ動詞に見えてしまうものが複数出てくると、本当に正しく英語学習を積んだ中学生でないと、正解にはたどり着けないはずです。
この問題を解くためには最低でも、
①tellという動詞が第4文型で、直後に『人』『物』を前置詞なしでとる。
⓶関係代名詞whatは先行詞を取らず、what以下には名詞を取ることができてSかOが欠けた不完全文が来る
③手段の前置詞byの後に、名詞句を作る
少なくともこの3点を正しく理解していないと、正解できません。
The dogs ①tell the users ⓶what sound is heard ③by using their bodies.
とってもいい問題だと思います。
日本語がないから日本語ではなく、英語の語順で思考しなければならない問題ですね(what とsoundをくっつけてくれているところに、この問題の作成者の優しさを感じます)。
そして中学校や高校の現場で行われている授業も間違っていません。
しかしその授業と、試験で求められている内容には大きな乖離があることを理解しておく必要があります。
冒頭例に挙げさせていただいた他動詞”interest”だって、根気よく丁寧に一人一人に指導したならば、誰でも必ず理解できるのです。
なんだか偉そうに言っていますが、山口自身も集団授業を任されたなら、『そういものだから丸ごと暗記してね。』と指導させていただくと思います。
学校の集団授業は、どんなに教務力の高い先生でも、
・完璧に理解できた⇒20%
・何となく理解できた⇒30%
・よく分からなかった⇒30%
・まったく分からなかった⇒20%
に分かれると言われています。
学校の先生も、教室の4割が理解できるような授業を心がけると言います。
もちろん、現場の先生方はみな、『全員に理解してもらいたい!』と願いながら授業をしていますが、それは理想論なのです。
・・・とまだまだ言いたいことはあるのですが、このままだとこのブログが終わらないので結論ですね。
英語学習は中学の早期段階がとにかく大切です。
『ぜひ当塾に!』と言いたいところですが、それはひとまず置いておいて、とにかく『英語と日本語ってまったく違うんだよ!』ということだけでも伝えてほしいのです。
I’m going to go abroad to study English. を 『私は英語を勉強するために海外へ行く予定です。』と教えてはいけません。
それは日本語です。
そうではなく、英語という言語は主張の言語だから、まず最初に『誰が?』『何をした??』が最優先されるのだと。
だから例外を除いてほとんどの場合『主語』と『動詞』が来るのだと。
だからこの英文も、日本語に直すならば『私は(誰が) 行く予定だ(何をする??) 海外へ (なぜならば)英語を勉強するために』と、きちんと左から右に向って、耳に聞こえてくる順番通りに訳すことの大切さを伝えてほしいと思います。
他にも、英語だと先生だろうが両親だろうが、友人でも2人称は”You”で表したり、日本語では人が主語になることが多いけれども、英語では物や名詞が主語になることが多いとか、少しずつ少しずつ色んな違いを知ってもらって、お子様が
『英語と日本語ってこんなに違うんだ!』と実感してくれることが大切だと思います。
お子さんにまったく罪はありません。
何となく『こういうものだから』で指導を受けながら中学時代を過ごしたのに、高校に入っていきなり
『さて、owe A to Bは、よく知られた表現である。ところがこの英文では、oweのあとにA(目的語)がなく、いきなりto Bが来ている。ここでは、what little guidance I hadが目的語で、文頭に移動していると考えないと英文構造は成り立たない。このように「SVO」は「OSV」の語順になることがあるので注意しよう。つまり、目的語が本来の位置とは別の場所に移動することがある。では、このような文構造を見抜くにはどうしたらよいのか?ここはひとつ基本に立ち返る必要がある。すなわち、文中の動詞が他動詞ならば、必ず目的語が必要なのだということ、文中においては名詞表現は必ず主語・目的語・補語のいずれかの働きをしていること、この二つの点を複眼的に見据えることから、このような、目的語という要素の移動を、確実に、論理的に見抜くことができるのだ。(英文読解の透視図より抜粋)』
・・・なんて言われても、(・・・え? ええぇ???)ってなってしまいますよね?
あ、ちなみにこの『英文読解の透視図』は本当に素晴らしい参考書で、山口の愛読書です。
悪く言いたいわけではないので悪しからず。
ただ、学校の現場で受けている指導と、入試で求められている英語力というものにはこれだけの開きがあることを知ることはとても大切ですし、高校に入学してからお子様が面食らうことのないよう、正しい学習法を伝えていくことは、私たち大人の使命だと実感します。
ですからまず第一歩として、ぜひぜひお父様お母様方から、『英語と日本語って全然違うんだよ!』ってことだけでもいいのでお伝えしてほしいです。
それだけでもその後の英語学習に飛躍的な効果が出ることをお約束いたします。