本当にあったものすごいお話(※以下、非常識なお話が出てきますが、当塾では一切こういった提案はいたしませんのでご安心くださいませ)

今では絶対に考えられない話なのですが、前職にて私は指導する側というよりは完全に営業マンでした。

そんなとある一介の営業マンのお話です。

とあるお問合せがありまして、内容はこうでした。

・高校3年生、ご連絡をいただいたのは10月

・偏差値は40未満、学習習慣はゼロ、名古屋市内の私立高校に通っている

・成績が悪すぎて、推薦ももらえない

・ご本人もお父様も第一志望はMARCH、MARCHならどこでもよい

・お金はいくらかかってもよい

こういったところです。

契約はそのお父様のご自宅でとのことで訪問させていただいたのですが・・・。

(イチロー選手の家??)というくらいのとんでもない豪邸でした。

それはさておき、指導の内容などを伝えつつ契約書を書いていきます。

偏差値が40未満でMARCHのどこか、それでいて学習習慣がゼロなのですから、私は一切の忖度なく、

『マンツーマンの指導を1日2コマ×週5』

『月40万円のお月謝(※もちろんこの塾ではこんな非常識な提案はいたしません)』

『プラス冬期講習100コマ』の提案をさせていただきました。

もしかしたら『ひどい、ぼったくりじゃん!』みたいに思われるかもしれませんが、よく考えてみてください。

『ほとんど勉強をしたことがない高校3年生が、最低でもMARCHに行きたい』と言っているのです。

金額の多寡はさておき、これでも全然足りないくらいなんですね。

そもそも時間が足りない。

もう4か月しかないんです。

もちろんお月謝も非常識なのですが、ご要望も浮世離れしていたんですね。

さらに言えば強制ではありません。

飽くまでも、『これだけは必要です。』を極めて現実的な形でお伝えしただけで、選択権はご家庭にあります。

するとお父様はご快諾、『分かりました。』とその場で判を押してくださいました。

しかし問題はその後発生します。

お父様『これで愚息も何とかMARCHには合格できそうですね。』と。

自分はそこでいったん契約書を前にして、お父様に説明いたしました。

山口『お父様、申し訳ないのですが、○○君の第一志望をお約束するものではありません。』と。

するとお父様の表情は一転して変化します。

お父様『どういうことですか?私は結果が約束できないものにこれだけの金額を払うことになるんですか?』

山口『お医者様が難病に苦しむ患者さんにベストを尽くすように、私たちも○○君の指導には全力を尽くします。しかし医療行為に100%の保証ができないのとどうように、受験という極めて不確かなものの結果を私たちが保証することなどできないのです。』

・・・みたいなことをこの後延々と30分ほどお話させていただきまして、最終的にはご理解いただき契約となりました。

先に結果をお伝えしておきます。

こちらのお子様は第一志望のMARCHには届きませんでしたが、何とか名古屋市内の某私立大学の合格を勝ち取ることはできました。

【最終的に○○君にかかった教育費は・・・】

月謝が40万円、講習100コマで90万円。

通塾していただきました期間が4か月でしたので、このわずかな期間に合計約250万円もの大金がかかってしまったということになります。

しかしここで冷静にお考え下さい。

例えば中学1年生から6年間の間、平均して月に3万円ほどのお月謝を払いながら通塾したお子様がいたとします。

その場合6年間でかかるお月謝は『216万円』。

もちろん、中学3年生や高校3年生は若干お月謝は上がったりするでしょうし、必要に応じて講習なども受けるかもしれません。

ですがいずれにしましても、今回ご紹介した○○君にかかってしまった教育費は、本来であれば6年間かけて払うものを4か月間に凝縮しただけに過ぎません。

それもですね・・・、この提案した内容は本来よりも若干割高です。

当然と言えば当然のことで、『元々学習習慣もあって、充分に学習効果が得られることが分かっている受験生』と『まったく学習習慣もなく、従来の指導カリキュラムと指導で効果が出るかどうか分からない受験生』のお月謝が同じなわけがありません。

そして何よりも、学ぶべき内容が10,000ほどあったとして、それを6年間、2,190日間かけて吸収するのか?

それともその10,000の内容をたったの4か月・・・、つまり120日程度で詰め込まれるのか?

得られる効果に歴然とした結果が出るのは言うまでもありません。

単純計算ですが、2,190÷120=18.25。

時間的な負荷は18.25倍もかかってしまうということになります。

いや、『たったの4か月で6年分を学ぶ』となれば、その負荷の大きさは18倍どころではないでしょう。

そういったわけで、昨日のブログの内容とも重複しますが、結局のところ『勉強をサボればサボった分だけ、大変なお金がかかってしまう』ということなんです。

塾の人間が守銭奴のようにご家庭に大金を要求しているわけではありません。

例えば日本の医学と環境ではとても治せない病気を海外の医学と環境に頼るのと同様に、従来の指導では到底第一志望合格に追いつける見込みがない場合は、非常識な提案もせざるを得ないのです。

それでいて結果なんてお約束できない・・・いや、もうこの際はっきりと申し上げますが、ほとんど無理なんです。

程度の違いこそあれども、『まったく勉強してないんで偏差値45くらいなんですけど、あと数か月で東大に行きたいんです』と言われているのと同じです。

それでもどうしてもというのであれば、無理は承知の上で無理なご提案をせざるを得ません。

話が長くなりましたが結論です。

だから当塾は『新規高校3年生の新規入塾をお断り』するようになったのです。

昨今の状況を鑑み、もしかしたら今後はもっと学年を引き上げるかもしれません。

今検討しているのは、『高校2年生の1月以降はご入塾不可』という制限を設けようと検討しております。

私たちは守銭奴のように、合格する可能性が極めて低い、それでも背中に火がついてしまった受験生に、非常識なご提案などしたくないのです。

当塾が願うのは、極めて常識的な範囲のお月謝でご通塾いただき、講習分などの負担を減らすために、たくさん自習室を利用して、たくさん質問をしていただきたいのです。

というわけで、かれこれ15年前、山口が営業マンだったころのお話でした。

ちなみにこの○○君はもうすでに某私立大学を卒業、今ではお父様の稼業を継ぐべく、お父様の下で経営のノウハウを学んでいるとのことです。

【※最後に】

今では信じられませんが、当時の私は社風の影響もありまして、結構営業成績というものに捉われていました。

改めて我ながら愚かしいなと思うのですが、こうして表彰していただけることに喜びも感じていましたし、もっと頑張りたい!と自分を見失っていた時期もあったと思います。

もちろん、当時も中高生のみなさんの夢を応援しておりましたが、それよりも『とりあえず(契約を)取ってから考えろ!』という思考回路でしたので、それは本当に良くなかったなと思います。

1週間で9人入塾って・・・(苦笑)。

今では9人入塾していただくのに2、3か月はかかっておりますが、本当にこれで良かったと思います。

抱える中高生が増え続けるということは、塾側にはメリットがあっても、中高生のみなさんやご家庭にはデメリットでしかありませんので(※例えば人数が増えることで、競争心や緊張感が増すなどのメリットはあるかもしれませんが・・・)。

そんなわけで世にも珍しい『広告宣伝をまったくしない』『体験授業の後もまったく営業電話をしない』当塾ですが、お気軽にご連絡くださいませ!