中学校で間違った英語を教えられると、その修正に膨大な時間と労力を割くことになります
折に触れて『ぜひ、中学生から当塾に来てほしいです!』とお話しておりますが、その理由のひとつがこれです。
間違った知識を、間違った学習法で学んでしまうと、新しいことを学ぶのではなく、『間違った知識を取り除いて、ゼロからスタートしてもらう』ことになるからです。
例えば次の文章、中高生のみなさんはどのように訳すでしょうか?
“I was studying, when my mother entered my room.”
これは中学2年生で登場する『接続詞(when)』という単元になります。
この簡単な英文、中学生はもちろんですが高校生も次のように誤訳します。
×『母が部屋に入って来たとき、私は勉強していた。』
論より証拠、京大専門の参考書を執筆されている小倉弘先生の参考書にはこう書かれています。
つまり先ほどの英文は、whenのカタマリから訳すのではなく、きちんと左から右に、目に入って来る順番通りに訳せばいいということになります。
“I was studying, when my mother entered my room.”
〇『私が勉強していたら、母が部屋に入って来た。』
これが正解で、当然国公立大学入試の記述二次試験においても、この答え以外は不可です。
とはいえ、こういう疑問も湧いてくると思います。
(『母が部屋に入って来たとき、私は勉強していた。』も
『私が勉強していたら、母が部屋に入って来た。』も、結局どっちも同じじゃん!)
間違った知識を先に植え付けられてしまうと、当然こういった生産性のない疑問が浮かび上がってきますし、その修正には大変な苦労が伴います。
何せ、自分が中学校の頃に学んだ内容が否定されて、新しい知識を理解し直す必要があるのですから。
論より証拠、×『母が部屋に入って来たとき、私は勉強していた。』が間違いである証拠をお見せいたします。
この文章は、以前も紹介させていただきました『スティーブン・キング』の短編小説の一節になります。
冒頭の文章がこちらです(※関係詞節や前置詞句は大幅に省略しました)。
Morrison was waiting for someone “when” he saw a familiar face.
この文章を中学校で教えられたとおりに、”when”から訳すと次のようになります。
×『モリスンが馴染みの顔を見かけたとき、彼はとある人を待っていた。』
日本語としても相当不自然です。
〇『モリスンがある友人を待っていたら、その時偶然馴染みの顔を見かけた。』
何よりも、whenから訳すと一度読んだ文章を返り読みすることになり、ただただシンプルに『読むスピードが2倍かかってしまう』のです。
間違っている上に非効率的ですね。
同じように、関係詞”where”を例にとってみると・・・。
I graduated from Nishio high school “where” I had studied hard.
これを学校で教わっている通りに”where”のカタマリから訳してしまうと・・・
×『私は勉強を一生懸命頑張った西尾高校を卒業した。』
これまたとんでもない日本語が出来上がってしまいます。
これも普通に左から右に訳せばいいだけですね。
〇『私は西尾高校を卒業したが、そこでは一生懸命勉強を頑張った。』
さらに言えば、これは関係代名詞などにも当てはまります。
私たちは中学校で、『関係代名詞には先行詞があって、それを”後ろから”修飾する』と徹底的に叩き込まれます。
しかし次の文章でそれをやると、とんでもないことになってしまいます。
I took several photographs “that” failed at capturing the beauty of my time in Nagasaki.
もちろんこの文章、先行詞はphotographsで、”that”は関係代名詞になります。
これを中学校で教わった通りに、後ろから修飾すると・・・。
×『私の長崎で過ごした美しい時間をとらえることに失敗した数枚の写真を、私は撮った。』
とんでもない日本語ですね(苦笑))
これも『後ろから修飾』なんてことはせずに、そのまま目に飛び込んでくるままに訳せばいいだけです。
〇『私は何枚かの写真を撮ったのだが、それは私が長崎で過ごした美しい時間を捉えたとは言い難いものだった。』
もちろん、この文章は山口が考えた文章ですので、これが最適解です。
【中学校で間違った英語を学ぶと、その修正にものすごい時間と労力がかかります。高校3年生からではもう手遅れだとお考えください。】
私は『間違った英語』と表現しましたが、これは必ずしも愛知県だけの話ではありません。
このような『間違った英語の指導』は全国津々浦々、至る所でなされております。
昨日のブログで書かせていただきました通り、『公立中学校では、良くも悪くも中学生全体を平均化した授業をやらなければならない』からです。
もちろん、山口が公立中学校の先生でも、その間違った指導をしなければなりません(だからこそ、私は絶対に公立中学校や高校の教師にはなりませんが)。
もちろん言うまでもなく、公立中学校のカリキュラムに準ずる大手学習塾もそうです。
そうして高校1年生や2年生になって、当塾に来てくれる高校生がいるのですが、みな面食らうんです。
『え!そんなの初めて知りました!』
彼らや彼女たちは本当に不幸です。
中学校の頃、3年かけて一生懸命学んだものが否定され、それを全部崩すことからスタートしなければならないからです。
そして大学受験において、英語は最も時間がかかる教科です。
これまでにも何度も申し上げて参りましたが、『大学受験において、高校3年間で英語に費やす時間は最低でも2,000時間』なのです。
これは高校3年間、一日も欠かさず毎日『英語だけで2時間学習』して初めて達成できる目標です。
これだけでも大変なのに、自分が学んだものを一度忘れなければならない。
勉学を頑張る者にとって、これほど辛いことはないでしょう。
だから(英語に関しては)一刻も早く当塾に来てほしいのです。
【それでも刈高生や岡高生は修正できます(※個々人の能力の問題ではありません)】
これもすでに何度申し上げてきましたが、刈谷高校や岡崎高校では、それを修正すべく、1年生の4月から膨大な課題を課し、授業のスピードも他校の2倍3倍で進んでいくからです。
私はすべての高校生に、これだけの課題を課しています。
①英単語100単語、プラスそれまでに覚えた英単語もチェック
②英作文5文ずつ(同じく、それまでに覚えた英作文もチェック)
③英文法課題(基礎)
④英文法課題(正誤問題)
⑤難文精読課題
⑥※受験生は過去問
この課題は毎週のもので、当然達成度が低ければ、山口から厳しい檄が飛びます。
もちろん、これらの課題は必要だから出しているのであって、『大学受験までたったの2年9か月しか時間がない』という事情を鑑みれば、正直これでも少ないくらいです。
そして刈高生や岡高生にこの課題を出しても、彼らや彼女たちは平然としています。
それは言うまでもなく、彼らは学校ですでに、『この課題と同等かそれ以上のものをこなしている』からです。
一方、とても残念なのですが、刈高や岡高生以外の高校生にこの課題を出すと、茫然としているのです。
(え・・・こんなの一週間でできるわけがないじゃん。そもそも学校でもこんなにたくさんの課題出ないよ・・・)
これまた何度も申し上げておりますが、私は『難関大を目指す受験生すべてに平等』なのです。
仮に偏差値40くらいの高校生が、『僕は(わたしは)東大か京大に行きたいんです!』と言ったとしても笑ったりしません。
真剣に受け止めますし、真剣に必要な課題を出し、全力で指導させていただきます。
そして今回のテーマに戻りますが、『中学校の3年間で間違った英語の指導を受けると、その修正には膨大な時間と労力がかかる』のです。
厄介なことに、その間違った学習法でも、公立高校入試の英語は高得点が取れてしまいます。
簡単に満点が取れてしまう。
しかしそれは受験生にとっては本当に不幸なことです。
中高生のみなさんはもちろん、お父様お母様も聞いたことがあると思います。
『○○さんは中学校の頃は英語が得意だったけど、高校に入ってからまったくついていけなくなった』
歯に衣着せずに言わせてもらいますが、『公立中学校のテスト、及び公立高校入試は、学習意欲がない中学生でもある程度理解できるように作成されている』のです。
難関大を志す受験生に焦点があたっているわけではありません。
そしてこのことに気付くのが遅ければ遅いほど、高校生が受ける負担はより大きくなり、難関大に合格する可能性も激減します。
極めて現実的なことをお伝えすると、そのタイムリミットは『高校2年生の冬』。
これが当塾が、『できれば中学生から体験授業を受けに来てほしい』をゴリ押ししている理由です。
現に当塾の中学生、人数こそ10人ほどですが、彼らや彼女たちの平均点は『450点』を超えています。
しかしうちの塾生が本当に開花するのは高校に進学してからです。
※最後に・・・無理して当塾に来ていただく必要はないのですが、とにかく本をたくさん読んでください(または読ませてあげてください)。
英語以前に、土台となる日本語がしっかりしていないと、英語を理解することはできませんし、ましてや記述できちんとした日本語の文章を書くことはできません。
たくさん本を読み、分からない語彙はその都度辞書で調べ、自分が素晴らしいと感じた文章は自分でも実際に書いてみる。
この過程はそのまま異言語の学習にも当てはまります。
外国語を学習する前に、まずは基本となる母国語の土台を築き上げてください。
みなさんが手にしなければならないのは、スマホではなく『本』です。