『後ろから訳しなさい』はまったく何の役にも立たなくなる日が来ます
I’m going to go abroad to study English.
多くのみなさんはこの例文を、『私は英語を勉強するために、海外へ行く予定です。』と訳すのではないでしょうか?
もちろん間違っていませんし、ほとんどの中学校でそう教わります。
しかしこの訳し方に慣れてしまうと、高等英語(特に長文読解)で大きくつまづいてしまいます。
もし冒頭のような訳しかたをしているのであれば、今すぐに改めないと近い将来に大変な苦労を強いられることになります。
この例文そのものはとても短いので、このように後ろから訳してしまっても困ることがないというだけの話です。
しかしよく考えるとおかしなことに気付きます。
『私は英語を勉強するために、海外へ行く予定です。』
この語順通りに英文にすると、こうなるはずです。
I English to study am going to go abroad.
しかしながら、この語順がむちゃくちゃであることは一目瞭然ですね。
冒頭の例文を音声にすると、こう聞こえているはずなんです。
I’m going to…(あ、何かする予定なのかな?)
go abroad…(海外へ行くんだ)
to study English.(英語を勉強するために)
主節動詞が必ず最後にくる日本語と違い、英語はほとんどの場合主語の直後に来るわけです。
もう根本的に、語順がまったく違うわけですから、本来英語は聞こえた通りに訳さなければならないのです。
ですが日本の公立中学校の英語の指導の現場では、必ず『後ろから訳しなさい』と教えらえれます。
文部科学省がそういっているので、現場の先生には何の非もありませんが・・・。
この『後ろから訳す』やり方で通用するのは、公立高校受験まで。
難関私立高校ではもう通じませんし、大学受験では完全にお手上げでしょう。
理由は簡単で、1つの文章がとても長くなりますし、従属節(補助の文章)と主節(メインとなる文章)が入り乱れるようになるからです。
例えば次の文章に目を通してみてください。
Yet, the problem of ensuring an adequate food supply is being made even worse by the global warming being caused by greenhouse gases , which is resulting in destructive climatic changes on planetary scale.
この文章、これで一文です。
これを後ろから訳していたら、100%訳せません。
そしてこれは長文の中の一文に過ぎないので、ここに時間をかけるわけにはいかないのです(こんな文章が延々見開き2ページくらい続いていることを想像してください)。
だけど恐れることはありません。
きちんと耳に聞こえてくる順番で、行ったり来たりせずに訳せば、誰でもこの文章は訳せます。
この長い文章を、正しく分けて、正しい順番で訳してみましょう。
①Yet, the problem of ensuring an adequate food supply is being made even worse② by the global warming being caused by greenhouse gases ③, which is resulting in destructive climatic changes on planetary scale.
① Yet, the problem of ensuring an adequate food supply is being made even worse
しかしながら、充分な食糧を確保するという問題は 悪化させられ続けている
(ちょっと変な日本語に感じるかもしれませんが、進行形の受動態なのでこのように訳す必要があります。)
②by the global warming being caused by greenhouse gases
地球温暖化によって←温室効果ガスによる
(前置詞がついた名詞は全てM句となり、修飾語となります)
③ , which is resulting in destructive climatic changes on planetary scale.
そのことは結果につながっている、地球規模の破壊的な気候変動へと。
(関係代名詞の非制限用法がニガテな高校生が散見されますが、特に何も考えずに『それは』みたいに軽く訳を与えればOKです)
どうでしょうか?
長い文章にぶつかったときに(どこから訳せばいいんだろう・・・)と右往左往してしまい、結局よく分からないから先に進んでしまう、そんな経験はないでしょうか?
厳しい言い方ですが断言します。
その読み方で長文が読めるようになる日は、永久にやってきません。
正しく文法を理解し、聞こえてくるままの順番で訳す練習をしていかなければならないのです。
もっと言えばこの『後ろから訳す』という訳しかたでは、リスニングにも手も足も出ません。
後ろから訳す癖がついてしまっている生徒は、一度最後まで音声を聞いて、その文章を丸暗記して、再び後ろから訳すという涙ぐましい不毛な努力を強いられることになります。
そうこうしているうちに、次の音声に進んでしまい、結局何も聞き取れないという最悪の結果が待っています。
ちなみに今回取り上げたこの文章、英検1級のテキストから抜粋してきたのですが、こんな手取り足取りの解説はしていません(そもそもただの長文の中の一文ですので・・・。)
日本語訳にはこう書いてあります。
Yet, the problem of ensuring an adequate food supply is being made even worse by the global warming being caused by greenhouse gases , which is resulting in destructive climatic changes on planetary scale.
しかし、充分な食糧供給を確保するという問題は、温室効果ガスによって引き起こされている地球温暖化によってますます悪化しており、その結果、破壊的な気候変動が地球規模で起こっている。
文句のつけようのない、美しい日本語ですね。
高校2年生以上で国公立を志望している生徒諸君は、こういうきれいな日本語に訳すトレーニングもやらなければなりません。
ですが、『英語を読み、聞き、話す』という本来の目的を考えるならば、百害あって一利なしです。
そもそも英語と日本語はまったく違う言語ですので・・・。
さあ今日も長くなりましたが、いかがでしたでしょうか??
もしかしたら英語がニガテな原因は、みなさんのせいではなく、これまで叩き込まれてしまった誤った学習法にあるかもしれません。
早い段階ならいくらでも修正ができますが、高校3年生ともなると、あまりのんびりもしていられません。
そもそも勉強するのも英語だけじゃないですしね。
限られた時間で単語を覚え、文法を学び、長文も読む・・・。
もちろん数学だって国語だって、理科や社会もやらなきゃならないんです。
最も効率の良い方法で、最も短く済む学習法を模索してください。
その上で『1日10時間勉強』する努力をしてほしいと思います。
そこまでやれば、大抵の行きたい大学には行けることをお約束しますよ!