“He is not taller than I am.” と “He is no taller than I am.”はまったく違うんやで!その③

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雑談

ふ~。

こんなに長くなるとは思わなかった…。

いや、でもこの難文を100%理解しようと思ったならば、これくらいの長文になってしまうのはいたし方ないと思います。

授業なら15分くらいで片付くんですけどね…。

それはさておき、しつこいようですがおさらい!

〈中学生のみなさんは以下の2だけでOK!〉

(1)”He is not taller than I am.” 『彼は私よりも背が低い。』

(2)形容詞は名詞だけを修飾、副詞はそれ以外全部(主に動詞)を修飾!

とりあえずこの2点だけでOK。

形容詞”no”が接続詞(名詞のカタマリ)を修飾できるというのは、高校に進んでからでOKですよ!

(どうしても気になる中学生の塾生は、ぜひぜひ質問に来てください)。

では、ここいよいよ最後、連日頭を悩ませていた一橋大学の超難文です。

【難関大を目指すなら、ここまで完璧に理解してほしい】

””Men were certainly found to be no more likely (than women) to discuss “important” or “sophisticated” subjects such as politics, work, art and cultural matters.”

では昨日の続き。

一応以下のルールを再確認してほしいです。

それを踏まえてなのですが、そもそも先ほどの英文、少しおかしな点に気付くかと思います。

それは助動詞、①”be likely to do~”の”to do~”がないということ。

そしてなぜだか、②”than woman”にかっこがついているということ。

なお、”than woman”に勝手にかっこをつけたのは山口です。

先に②から説明させていただきますと、この”than woman”は元々文末にありました。

ほら、”He is not taller than I am.”にしたって、”than I am”は文の後ろに来てますよね?

じゃあなぜ今回の一橋大学の英文のように、”than woman”がわざわざ文末からぶっ飛んで来たのかというと、これまた英語と日本語の考え方の違いから生じています。

英語圏の人たちは、『比較級の直後に、なるべく”than”以下”を並べたい』と考えているからなのだそうです。

△We had a hotter summer ”than usual” this year.

〇We had a hotter “than usual” summer this year.

なお、意味はどちらも同じ『今年は例年よりも暑い夏だった。』ですし、文法上もどちらも正しいです。

というわけで、今回の一橋大学の英文も、”more”という比較表現の直後に、比較対象の”than woman”『女性よりも』が飛んで来たんですね!

さらにいえば、こうすることで形容詞”no”も、いち早く接続詞”than”を否定できます!

“no more likely than woman”

×『女性よりも』

〇『女性と同じで』

そして順番が前後しましたが、①の助動詞”be likely …”の続きですが、”than woman”の直後に、”to discuss”と続いてますね。

というわけで、

“be no more likely to discuss”という元々の文章に、”than women”がねじ込まれたと考えればOKです。

文法的には『thanの挿入』というらしいのですが、まあ『英語圏の人は、比較対象を早く言いたいんや!』くらいで思っててもらえたらOKです。

“Men were certainly found to be no more likely (than women) to discuss “important” or “sophisticated” subjects such as politics, work, art and cultural matters.”

というわけで改めまして!

『男性は はっきりと分かった 女性と同じで 討論したがらないということが、重要であり洗練された話題 例えば政治や仕事、芸術、文化的な話題について。』

⇒男性は女性と同様に、政治や労働、芸術、文化的な話題について議論したがらないということがはっきりと分かった。

【え?面倒くさい??そんなことまでやらないといけないの?】

…なんて思われた中高生のみなさんもいらっしゃるのではないでしょうか?

ただ冒頭申し上げました通り、中学生のみなさんはとりあえず、(1)と(2)のルールだけ知っておけば大丈夫です。

特に(2)、これは比較の単元に関係なく『超重要』なので完璧にしておきたいですね。

そして高校生のみなさん。

みなさんがどの大学を目指されているかにもよりますが、少なくとも『偏差値が60を超える大学』を目指しているのであれば、絶対に理解しておかなければなりません。

今回取りあげた〈no more ~ than… 〉、いわゆるクジラ構文は、難関大の大好物、大学側は受験生のみなさんに、『これくらいしっかり勉強してこんかい!』と思っているのです。

例えば他大学からもう1文。

“If rational examination revealed that we had been unfairly treated by the community, philosophers recommended that we be no more bothered by the judgement than we would be if we had been approached by a confused person bent on proving that two and two amounted to five.”

しっかりとこの文にも、〈no more ~ than…〉構文が使われていますが、恐ろしいのは、受験生のみなさんは膨大な量の長文の中で、これをしっかりと読解しなければならないという事実です。

なお、単語については知っていて当たり前。

単語も分からない、文法も分からない状態で、この文章が訳せるわけがありません。

なお和訳は、『もし合理的に検証してみて、我々が社会から不当な扱いを受けてきたことが明らかになった場合には、2足す2は5であると証明しようと躍起になっている頭の混乱した人物にからまれた場合と同様に、その不当な扱いだと判断したことに煩わせるべきではないのだ、と哲学者たちは提唱した。』

紛ことなく難文です。

難文ですが、当塾の偏差値が70を超えている高校生の塾生は、しっかりと理解しています。

しかしながらもちろん、そこに至るまでは膨大な量の単語やイディオムの蓄積があり、中学生レベルの基本的な英文法を、100%理解してきたというバックボーンがあるということも事実。

逆に言えば、『ゆっくりと時間をかけて、文法と単語を極めるならば、この文章は充分に理解できる』ということです。

さらに言わせていただくならば、これらの文章を高校3年生の春から本格的に始めて、理解できる可能性は極めて低いですし、仮にできたとしても、受験生にとっては大きな負担であることは間違いありません。

最後に、山口が愛読している『リンガメタリカ』の著者、中澤幸夫先生の言葉をご紹介させていただき、本日のブログを終わらせていただきます。

【語彙を増やすときの心構え】

試験勉強をしている人は特にそうなのですが、効率性を重んじるあまり、自分で自分の首をしめるような、非常に限定的な学習態度に陥ることがあります。

たとえば、問題集に新しい単語が出てくると、中には標準的な受験単語集(ターゲットやLEAPなど)を開いて、それに掲載されていなければ覚えない、といった奇妙な方式をとっている人がいるのです。

標準的な単語を記憶することはもちろん大切ですが、このような態度では、語彙は一定以上増えないでしょう。

難関大と言われる大学には、もっと専門的な単語が出題されることが多いのも事実です。

そういう単語をどれだけ知っているかどうかが勝負となるのです。

それに、たとえば、生物の細胞を勉強しているときに、日本語で勉強する場合なら、「染色体」を同時に覚えないということはありえませんが、英語で勉強しているときにはどういうわけか、染色体を意味する”chromosome”を覚えようとしないのです。

これはどう考えても不自然なことです。

語彙を増やすには、派生語や多義語を覚えるだけではなく、その単語と関連がある周囲の単語も一緒に覚えることが大切です。

知識が豊富な人は、ある項目を覚えると、それに関する知識を調べて覚えていくと言われています。

単語もこれとまったく同じです。

最初のうちはつらいと思われるかもしれませんが、単語の学習にも『慣れ』というものがあって、苦痛に感じられる最初の段階を過ぎれば手に取るような花々がたくさん咲いている広い高原に出ます。

そこまで行かないと単語の学習も本物ではありません。

狭い態度で構えないこと、しばらく辛抱すること、それが語彙力増強の秘訣です。

〈『リンガメタリカ』Z会出版、P13~14より引用〉

異言語の、ましてや日本語と全く異なる英語の単語や文法の暗記や理解に、近道などあろうはずもありません。

『高校3年生から頑張る!』という学習態度や学習量で何とかなるほど、みなさんが挑む大学受験の英語は簡単でもありません。

文系理系を問わず、行住坐臥英語の学習に身を置いてほしいと心から願います。

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