ネイティブスピーカーの英語指導と受験英語
ありがたいことに、長いことこの教育という業界でお仕事をさせていただいておりますが、毎年必ずこのような質問をいただきます。
『小さいころからネイティブスピーカーの英会話教室に通わせているんですが、別で英語の受験対策は必要なのでしょうか??』
結論から申し上げますと、最終的なゴールが偏差値60以上の大学であるならば、必要になります。
これは間違いなく。
これは先に日本語で説明すると分かりやすいかと思います。
例えば日本語で、『学校へ行く』ということもあれば、『学校に行く』ということもあると思います。
また、『新しい本を欲しい』ということもあれば、『新しい本が欲しい』ということだってあるでしょう。
この二つは日本人の私たちからすれば、どちらも正しい表現だと思います。
例えば外国人に、『どちらが正しいの?』と聞かれたら、『どちらも正しいよ』と返答するでしょう。
しかし受験的には『学校に行く』『新しい本が欲しい』は誤りである、というようなことが起こってしまうものだと考えると分かりやすいと思います。
実際の例で。
次の問題は早稲田大学の正誤問題です。
【問 次の英文中の誤りを指摘し、正しなさい】
“I ran really hard , and fortunately I could catch the last train.”
答えは”could”を”was able to”に正さなければなりません。
解説には、『couldは過去のある時に~する能力を持っていた⇒~しようと思えばできた、という意味で過去における能力を表すが、過去のある場面でで実際に~することができたという<能力+実行>の意味を表す場合は、普通was able toを用いる。したがってここではcouldは不可。』・
・・・なんて解説があるのですが、都築先生に確認したところ、ネイティブスピーカーはどちらの表現も普通に使うのだそうです。
ちなみに都築先生にお願いして、都築先生が留学していた時にお世話になっていたというホストファミリーにも確認済です。
もちろん、受験英語ですので、私たちが指導するときにはこの解説と同じように説明しますし、否定表現の場合なら”was not able to””failed to 動詞の原形””missed”などを使うよう、塾生には伝えています。
ただそれは受験英語での話であって、実際のところネイティブスピーカーは”could”も”could not”も使っているわけです。
山口は基本的に、『言語はその土地の人が使っているものが正しい』と考えていますので、ネイティブスピーカーの指導を受けることが正だと思います。
ただ残念ながら、『ネイティブは使っているのに、受験英語だと×』なんてことが起こってしまうので、受験というものを視野に入れるならば言語とは別のくくりで『受験英語』というものを学ぶ必要があります。
冒頭の日本語の例で説明しますと、外国人の日本語講師が、【『学校に行く』という助詞は正しくないから、試験では×になります。正しく『学校へ行く』と表現しましょう】と教えているようなものです。
バリバリの帰国子女が、日本の英語のテストで満点を取れなかったりするのは、こういったネイティブの英語と受験英語のギャップによるものです。
でもまあ正直なところ、このような末節枝葉のあら捜しのような問題は、正直落としてしまっても構わないと思っています。
偏差値が60までの大学であれば。
それ以上の偏差値の大学では、本当に1点の差が合否を分けるので、こういった細かい受験英語の重箱問題にも対応できるようにしておく必要があります。
う~ん・・・。世知辛いですね!
ただここでブーブー言っても仕方ないですし、こういった情報を処理していく能力も、受験には必要なんだと割り切ってしまった方が楽ちんだと思います。
ネイティブの英語も楽しいですけど、受験英語も『そういうものだ』と思って取り組むと楽しいですよ!
それでは今日も一日頑張りましょう!